リオデジャネイロ オリンピック グループB 第1節 U23ナイジェリア代表戦
【マッチプレビュー】
遂に迎えた本番。初戦の重要性は言わずもがな。相手はアフリカの雄、ナイジェリア。マナウスへは試合当日に到着したという。コンディションには多少の難があるかもしれない。
フォーメーション&試合結果
U23日本代表 |
2-3 2-2 |
5 |
U23ナイジェリア代表 |
極めて順当な敗北
当たり前に敗れたと言っていい。
このチームの武器は堅守である。指揮官はそれを明らかにしてきたし、この堅守という武器でアジア制覇という結果も残した。実態は、すなわち如何ほどに世界に通用するかは、脇に置く。このチームが自らをどう規定しているかという話である。
そのチームが5失点すれば、当然に勝てる道理は見つからない。もっと言えば、3失点した時点で勝てる道理はなかった。その筋書きは存在しない。堅守というコンセプトはそういうものである。
相手をリスペクトしすぎた布陣
指揮官の思い描いた筋書きを少し考えてみたい。布陣は4-5-1を採用する。ご存知ではあろうが、このチームの主戦フォーメーションは4-4-2である。より守備に重きをおいてきたと考えていい。対世界は4-5-1、対アジアは4-2-2と考えてもいいのかもしれない。
もう少し具体的に布陣を覗いてみたい。中盤は、アンカーに遠藤を配し、その前には原川、大島というセントラルMFが置かれる。そしてサイドハーフには中島と南野が配置され、ワントップは興梠慎三となる。中盤で網にかけ、素早くカウンターを狙うという思想であるのは間違いない。
結局のところ、この狙いは、相手をリスペクトしすぎたものとなった。
序盤、ナイジェリアのディフェンスはディフェンスではなかった。それほどまでに脆い。結論として立ち上がりで必要なのは慎重ではなく、勢いであった。4-4-2であれば、より滑らかにゴールまで辿り着いたのではないか、そう思いたくなる。これはそれほどまでにカウンターを意識する必要があったのか、という問いにも近い。
厚くした中盤も効果は薄かった。2人がかりでもボールが奪えない。すると溜めが作られ、人がいてもナイジェリアの選手を捕まえることは困難となる。パスの出し手、受け手、どちらにも「人の数」は武器足り得なかったと言える。であれば、こちらも意思の疎通がより円滑ないつもの布陣で良かったように思う。
結果論であることは承知している。ただ、一つ言えるのは、指揮官が賭けに敗れたということである。相手に合わせた布陣で挑む、という賭けに。
オーバーエイジの選択
オーバーエイジも賭けだったのかもしれない。塩谷のことである。
従前より指揮官は、アフリカ勢への経験値の少なさを明言していた。それを補う親善試合も組んでいた。係わらず、その経験が乏しい塩谷というセンターバックを選び、初戦のスターティングイレブンにさえ組み入れた。
これは解せない部分も多い。奈良、岩波が故障を発生し、O.A.にセンターバックを選出することはわかる。実力だけを考えれば、それが塩谷であることも納得の範囲に入る。しかしナイジェリアへの耐性(世界への耐性という意味でもいい)という意味では選択肢として厳しい。
もちろん、監督がそれを思わないわけはない。その上での選択というならば、塩谷のポテンシャルに賭けた、そういうことなのだろう。もちろん賭けの結果は惨敗ではある。しかし、それを今言うのは、解答を知った上、ということも補っておきたい。
正念場
この監督は、これまで奇策とも言える手を幾度も成功させてきた。そして成功の証としてアジア制覇を成し遂げたと言っていい。が、ここにきてその冴えも陰ってきたと見る必要があるのかもしれない。
このチームが真に問われるのは、次節となる。策を用いるか、積み重ねに重きをおくか。手倉森監督の選択に注目したい。
採点(U23日本代表)
GK 櫛引 政敏 5.0
5失点。なんとか1つ程度はスーパーセーブを見せるべきだった。確かにどれもGKの責と言うには表現が重い。一方で大舞台でのファインセーブは躍進に不可欠なものとも言える。また、明確な難点を挙げれば、時に見せる精度の悪いフィードである。これは世界大会で見せていいレベルではない。
DF 植田 直通 4.5
実力は出し切ったが、通用はしなかった。ストロングとも言える強さは微塵も見せられず、奪いきれずに相手にチャンスをただ与えた。ひとつ慰みがあるとすれば、時折見せるハッとする縦へのパスだけか。
DF 塩谷 司 3.5
植田以上にやられた。決定的な負けが多く、大量失点の一因。ボールをまるで奪えず、キープされ続けた選手に決定的な仕事をさせた。攻撃でもミスが多く、能力不足と断言されても仕方がない。
DF 藤春 廣輝 4.5
評価が難しい。まず、攻撃では十分な働きを見せた。果敢に左サイドを駆け上がり、幾度か決定的なクロスを送り、そのうち得点に結びついたものもあった。が、守備が苦しい。特に序盤の守備は厳しく見ざるを得ない。左サイドで起点を作られ続け、失点を許した。まずは無失点というプランを考慮すれば、守備での失態は大きく見る他ない。
DF 室屋 成 3.0
室屋にとっては挫折でしか無い。攻守ともにまるで通用しなかったと言っていい。常に足を引っ張り続けたと非難があっても反論は難しい。確かに後半、攻撃における多少の活躍はあった。しかし全く挽回できるものではない。メンタルも含めた安定感が売りの選手ではあったが、五輪本番という大舞台に呑まれたのかもしれず。
MF 遠藤 航 4.0
とにかくパスが悪い。アンカーに位置する遠藤の役割は「最初のパス」を供給することでもある。守備、という役割では一定の効果があるにはあったが、リズムが欠っした一因は彼にある。また、この惨状をキャプテンとしてどう鼓舞したのかも見えにくい。
MF 大島 僚太 5.5
序盤は悪くない。ゴール前への飛び出し、ラストパスの供給と役割を果たした。が、時間が経つにつれ存在感は薄い。思い出したかのように輝きを放ったが、放電現象でしか無い。
MF 原川 力 5.0
潤滑油になったと言えなくはない。が、存在感が薄かったと言った方がより正しい。早めの交代は戦術的な理由が大きく、彼の責任ではない。
MF 南野 拓実 6.5
前半、脅威となり、1点目のPK奪取と2点目の得点という結果を得た。スーパーであったとは言えないが、日本代表で最も勝負をした選手でもある。後半、スローダウンしたものの、それは仕方のない一面もある。
MF 中島 翔哉 6.5
このチームおける彼は随分と頼りになる。フィジカルも含め、攻撃は十分通用した。最も通用したと言っても言い過ぎにはならない。守備での貢献も大きく、良い時のU23を体現する選手と言える。
FW 興梠 慎三 6.5
求められた攻撃の起点という役割を十分にこなした。スキルフルなボールキープでナイジェリアの身体能力に潰されず、パスは収まった。ワンタッチの判断も冴えがあり、連携面の伸びしろも含め、少ない希望でもある。
FW 浅野 拓磨 6.5(53分~)
交代から1得点。アーセナル移籍決定以降、一皮剥けた感があり、このままスーパーサブであり続けることには疑問。
FW 鈴木 武蔵 6.5(70分~)
交代後、1得点。 ナイジェリアが疲弊していたとはいえ、フィジカルを活かしたポストプレーは光った。何かレベルがひとつ上がったような雰囲気を感じさせる。
FW 矢島 慎也 5.5(76分~)
終盤のパス回しにおいて、ある程度の潤滑油にはなった。パスの出し手にも受け手にもなれる特性は短い時間なりに発揮したと思える。
あとがき
盛り返したとはいえ、決着がついてからの足掻きでしか無かったとも言えます。個々の能力としては埋め難いものがありましたね。
マジックなようなローテーションでアジアを制した手倉森監督ですが、本戦ではどうでしょうか。今のところ、全て裏目に出てしまっているように思います。個人的には次節は最も慣れたフォーメーションでお願いしたいと感じています。ただし、塩谷に代えて、岩波です。絶対。
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